近視
近視治療について
はじめに
30年程度前と比較して、お子さんの近視人口は3倍以上に増えていることが分かっています。
さらに近年、スマートフォンやタブレット端末が大いに使用されていることで、近視のお子さんの割合はさらに増加すると考えられています。
また、新型コロナ感染症によって外に出て活動する時間が圧倒的に減ってしまい、おうち時間が増えてしまっていたことも悪化の要因になるのではないかと危惧されています。
このことより、増加を続ける近視を抑制する対策が必要であるといわれています。
「近視」と「病的近視」
そもそも近視とは、眼に入った光が
- 網膜より前で焦点があってしまう
- あるいは近い場所(有限距離)で見ないと網膜面で焦点が合わない
状態を言います。
つまり、「近くのものは見えるけど、遠くのものは見えにくい」状態です。
これらは眼の前後径が長くなってしまっていることが原因でおこります。
近視が進みすぎてしまうと眼の前後径が長くなりすぎてしまい、網膜に亀裂が入ったり、新生血管が発生してしまうといった異常が出現することがあります。
このような状態になると「病的近視」と呼ばれます。
病的近視は視力低下(眼鏡をかけても視力がでない状態)を引き起こすだけでなく、失明にまでいたることがあります。
近視のデメリット
眼鏡やコンタクトの常用が必要ない程度の近視であればデメリットはあまりないかもしれません。常用が必要な程度に近視が強くなると、当然ですが眼鏡代やコンタクトレンズ代といった経済的な負担を生みますし、それだけでなくさまざまな日常生活上の制約も発生させてしまいます。たとえばプールや温泉などに入った時に裸眼だと周りが見えにくく不便さを感じたりさせます。
これらは場合によっては不便を通り越して危険と感じる場合もあるでしょう。そしてこれらの不便や危険は結果としてアクティビティの機会を敬遠したり、喪失させる要因にもなります。
病気という点でのデメリットとしては、近視が強くなると網膜剥離や緑内障といった病気が発症しやすくなってしまいます。また、前述のとおり、病的近視にまでなると失明リスクまで負うことになってしまいます。
近視治療について
現在、お子さんの近視に対する治療は、主に目薬による治療と特殊コンタクトレンズを使う治療が行われています。
目薬の治療は1日1回、就寝前に低濃度のアトロピン点眼薬を点眼する治療です。特殊コンタクトレンズを用いる治療は、夜間就寝時に特殊コンタクレンズを装用し、角膜の形状を変化させるオルソケラトロジーが主流です。多焦点レンズを用いることもあります。
このなかで、当院では最も簡便で副作用も少ない低濃度アトロピン点眼薬による近視抑制治療を行っております。
低濃度アトロピン点眼薬による治療は就寝前に目薬をさすだけの治療です。より低濃度のものから開始して、近視の状態に応じて濃度の高いものに移行します。
目薬による
治療の効果や安全性に関して
目薬による近視治療については7大学(京都府立医科大学・慶應義塾大学・筑波大学・大阪大学など)共同で行われた臨床研究で、その効果と安全性が確認されています。(ATOM-J Studyといいます)
海外ではもっと盛んに研究されています。アメリカやアジアではシンガポール・台湾など多くの国で臨床研究が行われており、その治療効果と安全性が確認されています。
低濃度アトロピンを用いた近視抑制治療は保険外診療(自費での診療)になります。
費用やより詳しい説明を希望される方はお気軽に医院までお問合せください。
(マイオピン)については
こちらも参照してください
日常生活の中で近視に
対して有効な対策
近業作業の連続が近視の進行にかかわっていることが分かっています。
30分に一回程度、一度手を休めて遠くの方をみるなどして眼を休めてください。
また、1日90分以上太陽の下で活動することが近視の進行を抑制することが分かっています。
どんな治療でも、やはり日常生活を通じて近視の進行を防いでいくというのが大切です。